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2004/08/25

47.シドニー!

 やはりオリンピック熱に浮かされているのか、村上春樹の『シドニー!』を再読。長い本だが2日で読み終えた。この人の文章は本当によく流れる。長さが全然気にならない。かの『ねじまき鳥クロニクル』でさえ4日で読み終えたぐらいだから、その辺のリーダビリティの高さはかなりのものだとつくづく思う。もちろん、リーダビリティが高められていることがその文章の価値そのものというわけではないのだけれど、なにごとにつけ、読みやすい文章というのはだいじだなと思うのでした。頭が良いことは大変によくわかるのだけど、宮台や東浩紀の文章なんて何言ってんだか全然わかんないものね。

 それはそうと、村上のトラベル・ライティングは実に面白い。表現が正確だし、いつのまにかぐいぐいと読み進んでしまう。途中でトイレに行けなくて困る。メシが食えない。そしてこれは旅行記に限ったことではないけれど、書いているときに集中力がある。対象の中に存在そのものを沈みこませていくような、フィジカルな集中力。特に冒頭の有森裕子のくだりを読むと、本当に「ひえええぇぇぇ~!」と感心してしまうことになる。
 もっとも、この集中力というのは才能のある作家なら多くの人が持っているもので、沢木耕太郎の文章にも、田口ランディの文章にも同じようなものを感じ取ることができる(沢木氏の文章には集中力を通り越してある種の気品さえ感じることがある)。ランディさんのマネージャーの方が「田口はなにしろ集中力が……」ということを言っておられたけれど、こないだ「ドリームタイム」を読んだときにもそれをひしひしと感じることができた。あのメルマガを1本だいたい40分で書いていたというのだから、それだけでもう脱帽ものである。僕だったら早くてもその数倍、2,3時間は絶対にかかる。2日3日、中には書き始めて1年かかっても終わらずに積み残しになっているものだっていくつもある。40分であれだけの密度のものを書くなんてほぼ絶対にできない。こういうのはプロだから云々というより、書くという行為に対する欲の強さ、切実さの度合いによるのではないだろうか。「書かずに死ねるか」という強い意気込みの差が、こういうところで目に見えるかたちとなって表れるのではないかという気がする。あるいは全然違うのかもしれないけれど。

 ところで僕はたくさんの本を乱読するというよりは、気に入った本を何度も読み返すタイプなのだが、「いいな」と思うのは、読み返すたびに新しい発見がある本だ。そして村上の本にはそれがある。ふと手にした本のページを適当に開いて読むと、そこから止まらなくなってしまうことがしばしばだ。だからやりかけた部屋の掃除が終わらなくて大変に困る。逆に――と、ここでいきなり文学から音楽に話が飛んでしまうのだけど――最近のボン・ジョヴィのアルバムにはそういった「何度も聴きたくなる」的常習性が感じられない。最初は「いいな」と思っても、それでおしまい。いいアルバムだとは思うが、なぜか聴きたいという気にならない。理由は不明。このふたつのあいだにはいったいどんな差異があるのだろうと時々考えるのだが、何度頭を捻ってみても答えらしい答えは出ない。いったい何が違うんだろう?

 今回読み返していちばん面白かったのは、9月28日の項にある、「アダルト・チルドレンとしてのオーストラリアの歴史――ファースト・フリートからシドニー・オリンピックまで」という歴史に関する考察。ACの概念を持ち出して説明したところが新鮮だし、そしてとてもわかりやすい。「そうか、オーストラリアってアダルト・チルドレンだったんだ」と考えると、いろいろなものごとがすっと1本のかたちを取るような気がしてくる。しかし自分は親に愛されたのかな。愛されたんだろうな。じゃあかのワラビーの国のことはあまり理解してあげられないかもしれないな。べつに理解しなかったからといってどうというものでもないのだけれど。

 アテネ五輪も終盤を迎えて、少しずつもの寂しさが漂ってきました。野球とバレーも負けちゃうし、テレビを捻ってもあまり見たいと思うものが見当たらないし。でも陸上の5000、1万あたりは見てみたいなーと思う。いままでまるっきり興味がなかったけれど、ちょっと気持ちが変わってきたみたいだ。中距離には中距離の、短距離とはまた違った魅力や発見があるのかもしれない。そんなことを少しずつ考えるようになった。「単に齢を取っただけだよ」なんて言われないといいのだけど。

 こんど横浜国際で何かなかったかな。セイコーのスーパー陸上とか何とか。せっかくだから見に行ってみるのもいいかもしれない。やはり現場は違うのだろう。100mもいいけど、5000とか1万とかも見てみたい。むずかしいことはわからない。けれど本物にはテレビとはまた違う何かがあると思うから。あ、いまネットで見たらいちばん安い席が1500円か。サッカー1回我慢すればじゅうぶん行ける範囲だな。もし天気がよかったら見てみようかな。そんなことを考えた1日でした。

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