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2005/01/30

58.赤と黒

 その人に似合ったセルフカラーというものがどの程度あるのかは知らないが、かなり長いこと、僕の好きな色は青とグレーだった。クローゼットを開けると、なぜか同じような色ばかりが並んでいるのに気がつく。そうですね? 黒が好きな人は「もう似たようなのをたくさん持っているのに……」と思いつつまた同じような黒を買い足してしまうし、青が好きな人は似たような青を買ってしまう。白でも赤でも、黄色でも然り。色だけでなく、似たような種類の服ばかりがそろってしまうというワードローブ問題は、林家ペー・パーでなくとも、きっと誰しもが抱えているものだと推察する。だって、この手の話はよく聞くものね。僕もその犠牲者のうちの一人です。これは結構悩むんだよな、実際。

 だが僕のそのワードローブ的セルフカラーの分野において、ここ半年ばかり、いくらかの変化が見られはじめた。色が変わったのである。増えた色は黒と赤。もともとモノトーンよりは色ものを好むたちで、むかしからわりに派手め色の占有率が高かったのだが、若干ながら、その比率に変化が起きてきた。それはどうしてだろう?というのがここでの主題のひとつである。どうしてこんなことが起こったのだろう??

 そもそものきっかけは、サッカーの練習着だった。
 去年の6月に成人向け初心者対象のサッカー教室に通い始めたのだが、当時僕はサッカーに適した服なり練習着なりというものを持っていなかった。とりあえずはそれなりのTシャツを持っていってみたのだが、綿素材のシャツは汗を吸うとなかなか乾いてくれないという欠点につきあたった。夏場だったこともあったし、それに背中にぐっしょり汗がへばりついている姿というのはそれほど見映えのいいものではない。
 で、すこしだけ参加してみて、これなら自分もいけるかなと見当をつけた頃に、たまたま立ち寄ったスポーツショップで練習用のプラクティスシャツが安く売られているのを発見。ナイキ製のなかなかカッコいいのが定価より安値で売られていたので、さんざん迷ったあと、思い切って買ってみることにした。全体が黒ベースのデザインで、ポイントで赤のスウォッシュと小さなマークが入っている。サッカーユニにありがちな胸のスポンサーはなし。クラブチームのレプリカではなく、一般の練習着だからそんな鬱陶しいものはつかないのだ。これは一般用プラクティスの優れた点だと思う。あの胸のスポンサーマークって結構ジャマくさいからね。その点バルサや国代表のユニというのは余計なものがなくてたいへん好ましい。もっとも代表のユニなんて持ってないんですけどね。日の丸とか鬱陶しいし。

 なんとなく見た目だけで買った黒×赤のプラクティスだったが、家の引き出しに転がっていた同じく黒地に赤のパンツと合わせてみると、これがピッタリだった。特にサッカー用のものではなくて、何かの拍子にダイクマで500円で買ったノーブランドのハーパンである。しかも今まで全然使っていなかったやつ。しかしいまではそれがすっかり気に入って、練習に行くときはいつもその赤×黒を着て出かけるようになった。
 考えてもみれば、以前の好みとはほぼ正反対である。もともと赤系のビビッドな色が苦手で、大人っぽい黒も似合わないような気がしてずっと避け続けていたのだから、この変化は自分にとっては結構な驚きだった。そういえばこの1年くらい、青い服を買った記憶がない。まるでない。まったくいったいどうなっちまったんだ?

 黒×赤がカッコいいというのに気がついたのは、実はそれほど最近のことではない。
 白状すれば、小学生の頃読んでいた「少年ジャンプ」にまで遡る。当時「ジャンプ」に連載していた「キン肉マン」がそのきっかけだ。おお、恥ず。
 この「キン肉マン」の最後の王位争奪戦の時にキン肉マンが着ていたコスチュームが、黒と赤の配色だったのである。それまでキン肉マンのコスチュームといえば、白パンツ一丁のだっさ~いものだけだったから、この変化には当時の僕もずいぶん面食らった。しかもこれがなかなかカッコいいのである。このコスチュームは作者のゆでたまごが考案したものではなくて、読者の応募によるものだったようだが、これを見て、「黒と赤というのはずいぶんいい組み合わせなんだなあ」という印象を強く持った。おそらくは、そのときの印象があれから15年以上経ったいまになってむくむくとその頭を盛り返してきたのだろう。子どもの頃の記憶というのは実に馬鹿にならない。つくづくそう思う。

 以来、スポーツセンターにトレーニングに行くようになってからも、ほぼこの配色のカッコで出かけるようになった。……というよりは、この色しかトレーニング用のシャツを持っていなかったというのが偽らざる理由なのだが、とにかく黒と赤しか着なかった。メインのトップスは黒のシャツで、洗い替えのときに使うサブのシャツは赤という具合。すっかりそれで覚えられてしまったので、いまさらほかの色に変えるというのもできづらい雰囲気がある。まあ、べつにそんなことはどうでもいいんだけど。

 なぜ赤と黒(「黒と赤」といったほうが正しいか)がいいのだろう? それについては自分でも考えた。いままでの好みとは正反対の色。たぶんそれは、黒というのはどこか強そうに見えるから、というのもあると思う。日本やヨーロッパではあまり見かけないが、ブラジルのバスコ・ダ・ガマなんかは黒ベースのシャツでかなりカッコよかった。なにかこうシャープで、意思が1本通っているような気がする。
 それから、赤と黒というのは、ともに主張の強い色というのもある。目立つし、強そう。特にこの2色が組み合わさると、その傾向は一層強くなる。なにかちょっと悪者っぽい雰囲気もあったりするけどね。そういえばルパンⅢ世のカリオストロ公国の国旗が黒地に赤十字だった。イングランド国旗の<St. George>を黒地にしたかたちのデザイン。うん、たしかにあれはカッコよかったぞ。

 でも色の好みが変わったいちばんの理由は、いままでのセルフカラーに飽きたということに尽きるのではあるまいか。青とかグレーとかはもういいやと思っているのではないだろうか。違う自分(?)を試してみたいのではないだろうか。薄弱な根拠ながら、そんなことを考える。ま、単にそういう季節だということかもしれないですけど。

 そうそう、こないだの月曜に人と待ち合わせをしたら、「なんか雰囲気違うね」と口々に言われた。「そう?」と返すと、「うん、街の人みたい」とのこと。をいちょっと待て、「街の人」ってなんだ? 趣旨がわからん。「じゃあいままでは?」と聞いたら、「なんかね、“自然の人”って感じ。棒とか持ってそう」。は? なんですかそりゃ。わしゃ田舎のガキ大将か。短パンにランニング着てんのか。虫とか追ってんのか。でもまあいいや、どういうものであるにせよ、何がしかの変化はあるみたいだから。それにいままでとちょっと違うって、なんだかちょっと面白いしね。

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