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2005/02/04

59.鬼やらい

 めずらしく平日の日記です。しばらく休んでいましたが、最近また書けるようになったみたいです。たまに書けなくなることがあります。理由は不明。でも今回のはちと長かったな。書けない時には無理に書かないというのが僕のやり方なので、そういうときにはあきらめて放っておくのが常なのですが……。

 さて、きのうは豆まきでした。節分。季節感や行事の感覚がなくなるのはいけませんね。すっかり忘れてました。母が豆抱えて帰ってくるまでは。季節感はだいじにしたいものです。

 で、節分豆まきをしたんですが、ことしのうちの場合、これがふつうとちと違う。猫に鬼のお面被せて豆をぶん投げるというひどいもの。ことしは猫が鬼なのです。言っておきますが、うちでやってるのは動物虐待のそれではありません。からかっておもちゃにして遊んでるだけ。あ、でもそれを虐待というのか、どうだろう。まずいな。いや、ともかく、まあそんな感じのこと。母はこういうのが好きで、ちょくちょくそういうしょうもないことを実行に移したりします。ひどい飼い主だ。かわいがっている、ということになるとは思うのだけど。

 猫に向けて豆を投げる。「鬼は外、福は内」。もちろん猫には何のことだか分からない。ただびっくりして家の中を逃げまわる。テーブルの下に隠れようとする。そこになおも豆をまく。鬼やらい! 猫はわけがわかりません。鬼やらい! 決して広いとはいえない家の中をあちらこちらと逃げ惑い、しまいにはカーテンの陰に隠れてそれっきり出てこなくなってしまいました。突然のことに驚いてすっかり怯えてしまったようです。抱いてみると身体が震えている。獣医に連れて行って腰を抜かしたときのようなことになっています。うちの子は生まれつき根性なしなので、こういうことがあるとすっかりすくんで腰を抜かしてしまうのです。もはや逃げようっていう気力もないみたい。鼻も真っ赤になって乾ききっているし。

 あまりにかわいそうなので、あったかいところに連れていって、そのまま寝かせてあげました。知らなかったのだけど、どうやら今日は朝から身体の具合がすぐれなかったみたい。ろくに歩きまわることもせずメシも食わず、1日中ほとんどずっと丸くなって眠っていたとか。具合が悪かったんだね、きっと。悪いことをしてしまった。

 「鬼やらい!」 これで効果はあるのでしょうか。
 「鬼やらい!」 鬼は退散するのでしょうか。
 どうかなあ。よくわからない。猫に豆を投げてもしょーがないような気がしますが。
 でも最近僕は、ある部分においては鬼の存在を信じているかもしれません。鬼というか、死霊とか生き霊とか、そういう類のものについて。むかしはそんなものがごくふつうに存在していたんだよね。源氏物語とか、陰陽師の世界にもそういうのはごくふつうに出てくる。
 いま読み返している村上春樹の『海辺のカフカ』にもそういった話は出てきます。生きて活動している人間の中から霊――あるいは魂の一部のようなもの――が抜け出し、現実世界や夢の中で時空を越えて想いを遂げる、誰かを損なう、本人の知らないところでほかの誰かに何かを及ぼす。そういうことが出てきます。恐ろしいのは、当の本人が無自覚なところでそういうことが起きてしまうということ。源氏の世界では、嫉妬に駆られた六条休息所は知らぬまに生き霊となって、源氏の正妻・葵の上を憑り殺してしまう。しかし本人にはまったくその自覚がない。のちにみずからの為したことに気づき、己の業の深さを恐れ、剃髪して出家をする。鬼の道ゆき、そして深い眠り。人は夢の中でいったい何をしているのでしょう? 夢さえも見ない深い眠りの中で、いったいどこに行くのでしょう? ほんの少しだけそういう経験のある自分としては、そんなことがちょっとばかり気になります。あの深い眠りの中で、自分はいったいどこに行っていたのだろう? あの深い井戸の底の泉のような場所に降りていったのは、やはり傷んだ心を癒すためだったのだろうか。あれほど深くに降りていくことは、そのために必要なことだったのだろうか。

 そうそう、テレビで節分の豆まきを見て思ったのは、鬼っていわゆる赤鬼青鬼みたいな格好をしてるんだろうか?ってこと。鬼ヶ島にいるみたいな、二本の角を生やして金棒を持って、村人に悪さをするようなあれなんだろうかってこと。どうもそれだけじゃないと思うんだよなあ。鬼はどこか遠くの鬼ヶ島にいるのではない。それは自らの内にいる。目に見える角もなく、金棒もなく。ある種の想いは、容易に時空を超える鬼になるのかもしれない。
 ああ、だんだん考えがまとまらなくなってきた。体調がすぐれなかったせいだろうか。今日はもう早めにやすんだほうがいいのかもしれない。寝よう、もういい時間だ。残ったページを読むのはまた明日。明日また読めばいい。鬼やらい。鬼はいなくなるのだろうか。鬼やらい。自らの鬼をつかむことができるのだろうか。考えるのがむずかしくなってきました。おやすみなさい……。

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