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2005/08/26

【香港的小旅行記 第29回】

 ■タイムズ・スクエア:

 そごうを出た次は、駅から少し歩いた先にあるタイムズ・スクエアに行ってみる。ここは駅からちょっと離れているせいか、敷地が広い。正面入り口前に立ってみると、これは見事な建物である。でかい。重厚で立派。その外観は中環あたりのオフィスビルによくあるような必要以上に近代的な感じのものではなくて、タイムズ・スクエア的に適度な古さを残しながらも、古くなりすぎないモダンさも備えている。正面玄関前のスペースがもっとゆったりとってあるとなお見映えがしたとは思うが、これは土地の狭い香港ではむずかしい話だろうし、これぐらいの規模なら新宿にあるタイムズ・スクエアと較べてもほとんど引けを取らないと思う。
 中は実に広々としている。地上14階地下2階。広々としているということではランドマークと同じだが、かなりたくさんの買い物客が歩いているし(いささか多すぎはしたが)、ここにはランドマークにはなかった活気というものがある。
 建物の2Fから9Fまでは大きな吹き抜けになっていて、全体の様子がひと目でわかる。そういえばランドマークも、階数は少ないとはいえやはり吹き抜けになっていた。東涌のショッピング・センターもそうだった。よく知らないけど、吹き抜けというのは風水学的に見たら何かいいことでもあるのかもしれない。


File0179
(暗くて見づらいですが、タイムズスクエア内の吹き抜け。香港の建物はこういうところが多いです)


 建物の内部はフロアごとにテーマが分かれていて、10Fから上はレストラン街、9Fが子供用品、8Fが生活用品、7Fが家電、6Fがスポーツのフロアになっている。5Fから下はファッションが中心で、カジュアル&フォーマルな洋服のほか、雑貨や化粧品、それにマークス&スペンサーやレーン・クロフォードといった英国系のデパートも入っている。地下には飲食店や書店、ドラッグストアなどがあり、日本料理のお店や、なぜか回転寿司なんてものもある。回転寿司って香港でも人気あるのかな?
 もちろんフロアやショップによって多少の違いはあるけれど、全体的にみれば、ここは若者向けのショッピング・ゾーンという印象を受けた。そしてやはり僕なんかにとってはこれぐらいの雰囲気のところがいちばんしっくり来る。体が馴染む。
 ランドマークみたいなところももちろんそれなりの良さというものはあるのだろうけれど、ああいうショップというのは、スーパーマーケットにあるようないい意味での「その他大勢」的匿名性みたいなものが希薄だから、僕なんかだと変に緊張してしまう。それもひとつの慣れなのかもしれないけれど、ま、ああいうところはもっと歳をとってからでいいです。

 レストラン街と子供用品のフロアには用がないので、僕はエレベーターで8Fまで上がり、上から順に、おおまかに中のようすを見てまわることにする。
 7Fと8Fには電気製品のお店が多い。電器店のショウウインドウには、最新型の携帯電話が飾られている。こちらでは日本と同等か、あるいはそれ以上に携帯が普及していて、街中ではとにかくそこら中でみんなのべつまくなしにしゃべっている。こちらの携帯電話は日本と違って、折りたたみ式というのはほとんどない。むしろ幅広で画面の小さいやつが主流である。これはヨーロッパでも同じだ。
 まわりを見渡してみても、画面をのぞきこみながら親指をせっせと動かしている人というのは見当たらない。携帯を手に持っている人はほぼ例外なく電話を耳に当てて、大きな声で何ごとかをしゃべっている。メールよりも話すことの方が圧倒的に主流なのだ。メールがあまり重要視されていないから画面は小さいもので十分だし、そうなるとわざわざ折りたたみ式の分厚いものにする必要はない。彼らにとっては携帯電話というのはあくまで話すための道具であって、それを使って文字でやりとりするというのはあまり念頭におかれていないみたいである。
 そういう人たちから見ると、電車の中で乗客がみんなして携帯の画面を見つめている光景というのはかなり奇異な光景として映るかもしれない(僕もやってるので人のこと言えないけど)。まして写メだとかデコメールだとか、ムービー写メールなんてものの存在理由にいたっては、ほとんど理解不能なのではあるまいか。
 それともそういう光景というのは、彼らにとっては「日本人というのは子供から老人にいたるまで、すべての人がハイテク機器を操作しているすごい国だ/未来都市だ」というふうに見えるのかもしれない。どうなんだろうな。興味のあるところではあるけれど、ちょっとよくわからない。そういう話を聞いたこともなくはないけれど。
 そうそう、携帯といえば、こちらでは走っている地下鉄の中で通話をしている人がいるのを見かけた。地下の走っている電車の中で、である。これはどういうことなんだろう。こちらの携帯は少し方式が違うのだろうか? 香港の携帯は実は全部PHSだった、とかね。あり得るかもしれない。


File0177
(香港タイムズスクエア前。変にこぎれいじゃなくて、いい感じの建物でした)


 家電のフロアをもう少し歩くと、大きな家電量販店が見えた。安売りかどうかは知らないが、まあ日本でいえば、コジマとかヤマダ電器とかラオックスみたいなものだろう。
 香港の家電事情というものもぜひ見てみたかったのだが、それを見だすとまた大幅に時間を食ってしまうことは明白だったので、ちょっと気持ちを残しつつもパスしてきた。この頃には「あともう1日あったらなあ」などと思うようになっていたのだけれど、いまさらそんなことを言いたててみてもしょうがない。滞在日数は限られているのだ。
 ただ、店の外から中の様子を窺ったかぎりでは、品数の点ではかなりいい線をいっているように見えた。商品の質もよさそうだったし、雰囲気的にも日本の量販店に近いようだった。店舗の前に置かれた新型のテレビの中では安室奈美恵が歌っていて、何人かの客がその姿をじっと見つめていた。「ああ、安室奈美恵だな」という感じで。その視線は割と好意的なものに見えたから、安室奈美恵はこちらでもかなり人気があるのかもしれない。

 6Fはスポーツ用品のフロア。エーグルやコロンビア、パタゴニアのようなアウトドア系のお店から、フィラ、プーマ、コンヴァースのようなスポーツ・ブランド、それにマラソン・スポーツやロイヤル・スポーティング・ハウスといった大きめのスポーツ・ショップも入っている。
 香港の街中やスポーツ・ショップを眺めていて思うんだけど、香港ではスニーカーとかのスポーツ・シューズの人気がすごく高いみたいである。
 どのお店に行っても、そのお店のいちばん目立つようなところにナイキやアディダスやリーボックやニューバランスといった人気メーカーのシューズがたくさん並んでいるし、「スポーツ用品といったらまずシューズ」みたいな雰囲気がそこかしこに漂っている。油麻地からちょっと北に行った旺角の近くには、通称「スニーカー街」と呼ばれるスポーツ用品の卸問屋が集まる通りがあるし、道行く人の姿を見ていても、服よりも先に靴に気を使っているというような印象を僕は受けた。
 また『少林サッカー』の話になるのだが、この映画を見ていてとても印象に残ったことのひとつは、この映画の中では靴というのがかなり大きなアクセントになっているということだった。
 主人公のシンははじめ、穴のあいたボロボロのスニーカーを履いていたのだが、そのスニーカーが縁でヒロイン(ムイ)と気持ちを通わせるようになるし、その時ムイがほころびを直したボロボロのスニーカーが、ストーリーの最後になって大きな力を発揮することになる。
 また映画の冒頭の方では、シンが高級デパートのショウウインドウに飾られた真新しいスニーカーをじいいいっと見つめるシーンが出てくるし(そして彼はすぐにデパートの店員に追い払われてしまう。デパート側にしてみれば、彼のような貧しく汚い身なりの人なんて邪魔以外のなにものでもない)、別のシーンではたしか、シンがムイに向かって、「おまえに靴を買ってやる」みたいなことを言う場面もあったと記憶している(なかったかなあ?)。
 少林チームが勝ち進むようになると、チームのメンバーは新しいシューズを手に入れて、みんなで輪になってそれまで履いていたボロボロの靴を捨てる。まるで、そうすることによって自分たちの貧しい過去との決別を宣言するかのように。
 この映画を見ていて思ったのは、香港では、「いい靴を履いているということが、その人の人生の成功の証」みたいな意識があるのかな、ということだった。その人がどういう人生を送っているかということはその人の履いている靴に如実に表れるものだ、だから靴には日頃から気を遣うようにしなければならない、といったような。
 もし、香港における靴というものに対する意識が実際にそういうものなのだとしたら、そこまでの感覚というのは日本にはあまりないのではないかと思う。もちろん、電車の中吊りにあるような男性向けのファッション誌の見出しには、「この秋注目のブランド」とか、「即買いアイテム50」といったような購買心理を無意味に煽るようなコピーが載っていたりするわけだけれど、でもそこには「いい靴を履いているということが、その人の人生の成功の証」といったようなある種の切実さというものは、かなり希薄なのではないかという気がする。
 これは薄弱な根拠に基づく単なる僕の推測に過ぎないのだけれど、香港では靴というものが一種のステイタス・シンボルのごとくみなされているのかもしれない。


File0176
(銅鑼灣の街並みをもう1枚。バスはそのほとんどがダブルデッカー(2階建て)

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