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2005/08/13

【香港的小旅行記 第27回】

 ■HMV:

 ランドマークの中はとても広々している。地上階は真ん中が大きな吹き抜けになっていて、全体のようすがひと目で見渡せる。とてもきれいだ。そして建物の中は、こちらが拍子抜けしてしまうほど人がいない。今日は日曜だし、「香港ナンバーワンのショッピング・センター」というからにはさぞ人出も多いだろうと勝手にイメージしていた僕にとっては、これはひどく意外な光景だった。雰囲気的にはさっき見たペニンシュラのショッピング・アーケードに近い。きれいで清潔だけど、それは消毒されたかのような清潔さで、あまり活気みたいなものは感じられない。
 もちろんこれは「流行ってない」ということではなくて、ここに入っている店舗のほとんどが高級ブランド店だからである。ルイ・ヴィトン、ヴァレンティノ、グッチ、クリスチャン・ディオール、プラダ、フェンディ、ヴェルサーチ、セリーヌ、ミッソーニ、コーチ、ティファニー、ブルガリ。そういうお店ばかり。9月というのは夏のバーゲンシーズンが終わって間もなくなので、日曜日でも人出が少ない季節なのかもしれない。
 ペニンシュラでもそうだったけど、僕はこういうところにはほとんどまったくと言っていいほど心惹かれない。こういうところを見ているくらいだったら、さっきのハーバー・シティやトイザらスなんかを見ている方がよっぽど楽しい。それほど時間が余っているというわけもないので、省けるところはさっさと省いてしまいたい。よって僕は、香港の繁華街としては異様なまでに人口密度の少ない店内を大雑把に見てまわると、だいたい雰囲気がわかったところでさっさと外に出ることにする。正直言ってこんなとりすましたところに長くいたりしたら肩が凝ってしょうがない。

File0083
(↑ランドマークを出たすぐところの街角。この辺りのタクシーの色は赤)


 ランドマークを出た僕は、次にランドマークの裏にある「セントラル・ビル」という名前のショッピング・ビルの中へと入っていく。迷うことなく入る。そしてエスカレーターでひとつ上のフロアに上がると、そこにはいつも見慣れたHMVの店舗が広がっている。オー、イエス。そう、ここにHMVがあることは事前に調べて知っていたのだ。そういうことはちゃんと調べてあります。ありますとも。
 まず僕はふらふらと中を歩いて大雑把に店内を見てまわる。ここは香港のHMVの中でも規模の大きい方だと書いてあったが、店舗のスペース的には「まあまあ」というところだと思う。変に小さくはないけど、でも新宿のタイムズ・スクエアのHMVに較べたらこっちの方が狭い。おそらく狭い。広さ的にはだいたい横浜のHMVと変わらないぐらいではないだろうか(こう書いていったい何人の人がその実感を僕と共有することができるのかはきわめて疑問だが)。
 そして香港にあるものというのはだいたいがこんな感じに狭くできている。少なくとも僕はそういう印象を受けた。基本的に繁華街地域の敷地自体が狭いので、ホテルにせよコンビニにせよデパートにせよ、ほとんどのものが宿命的に狭くコンパクトになってしまうのだ。もちろん全部が全部そうというわけではないけれど、でも全体的にそういう傾向があると言っていいと思う。
 「やっぱりこういうところは落ち着くなあ」なんてひとり呟きながら、とりあえず試聴機のヘッドフォンを耳にかける。その時聴いていたのはライフハウスの「スピン」という曲。前からちょっと気になっていた曲だ。
 「何もこんなところまで来て、貴重な滞在時間をレコード・ショップなんかでつぶさなくてもいいだろうに」と、これを読んでいるあなたは思われるかもしれない(自分でもちょっと思うけど)。でもダメなのだ。こういうところにいると、僕は「ああ、自分の場所に来たな」という気持ちになって安心してしまう。旅行中というのはいつもどこかで緊張を強いられているようなところがあるので、こういう時間が少しでもないと持たないのだ。まあ「ただ単にビョーキなのだ」と言ってしまえばそれまでなのかもしれないけれど、でもこの感覚をわかってくれる人は結構いると思うんだけどなあ。いないかなあ(そういえばパリに行ったときもヴァージン・メガストアでさんざん時間をつぶし、こないだカナダに行ったときも、モントリオールのHMVを物色し、U2のカナダ盤シングルを買いました。バカだ)。
 香港の物価は基本的に高いということを先ほどもどこかで書いたけれど、それはCDやレコードについても同じことが言える。やはり全体的に値段は高め。洋楽の輸入盤新品が98ドルから120ドル。1ドル17円で計算すると、1600円から2000円というところ。これだと日本と変わらないか、ものによっては日本よりも高いということになる。これはちょっとちょっとである。ならレコファンやディスクユニオンで買った方が安いじゃないか。どうやらレコードに関しては、香港はフリーポートの恩恵を受けているとはあまりいえないようである。
 ただし、旧譜に関しては悪くないかもしれない。たまたま手にとったニルヴァーナの『イン・ユーテロ』は68ドル(約1100円)だったし、それ以外のものもだいたいこれぐらいだったから、古いものに関してはこれぐらいが相場なのかもしれない。新譜は高いけど旧譜は安い、とかね。


hmv


 店内の端っこの方には、香港ポップスを置いたコーナーがある。ちょうど日本のHMVの端っこの方に邦楽のコーナーがあるのと同じように。僕は香港ポップスに関してはまったくといっていいほど無知なので、フェイ・ウォンやビビアン・スー以外の人についてはまったくわからない(ビビアン・スーはたしか台湾の人だったはずだけど、まあいいか)。
 香港ポップスのコーナーのさらにその一角には、日本のポップスのコーナーがあった。これは日本からの直輸入盤ではなくて、こちらでプレスされた製品のようである。帯にある文字が日本語ではなく全部漢字になっている。そして値段を見てみると、これが安い。日本では邦楽のCD1枚がだいたい3千円ぐらいするが、ここでは1枚100ドル(1700円)前後である。つまり洋楽であっても日本の音楽であっても、CD1枚の値段はほとんど一緒なのだ。これはちょっと驚きである。よもや日本より安いとは。
 その辺で目についたのは、宇多田光や濱崎歩、瀧&翼(タッキー&翼)、松浦亜弥、安全地帯など。決して「なんでも揃っている」というわけではないけれど、でもこの値段は魅力である。中身はほとんど一緒のはずなのに、なんで日本と香港でこんなに値段が違うんだよと思う。まったくどうしてなんでしょうね。地下鉄とかと一緒だよな。
 昨夜入った油麻地のレコード屋ではカセットテープが置いてあったが、そういえばここにはない。全然ない。なんでだろう? カセットテープを買うのは下町に暮らす低所得者層に限られるのかもしれない。あるいは「ハイソ」(死語)な人々にとっては、たとえ値段が安くとも、カセットテープなんぞを買うというのは「正しきこと」とはみなされないのかもしれない。どうなんだろう、ちょっと聞いてみたい気もする。
 また、こちらではDVDがとても普及している。ここのHMVにはビデオというものがなく、完全にDVDに切り替わっていた。これも中環というファッショナブルな地域にあるレコード・ショップのせいかもしれないが、でもDVDの普及率は日本よりも高そうである。(※2002年当時の話です。いまから3年前だ)
 そのほかにはVCDなるものがここにはたくさん置いてある。これはたぶんビデオCDの略なんだろうな、よくわからないけど。外見上はDVDみたいで、そのソフトの多くは映画やなにかだから、きっとDVDの親戚みたいなものではないかと想像する。DVDに較べてとても安く、1本が15ドルから20ドル。高いものでも40ドルくらい。値段にばらつきがある理由は不明だが、ともかく安いということから推測するに、若干収入の低い階層の人たち向けの商品なのかもしれない。
 店の端っこの方には、ほんの少しだけだけどアダルトソフトも置いてある。アダルトものって日本ではこういうところにはふつう置いてないから、この光景はちょっと意外だ。しばらく見ていたけど、棚の前で立ち止まって商品を見てる人はひとりもいなかった。いや、これは視界には入ってるんだけど、気まずくて知らんぷりしてるだけだと思うけどな。気にならないわけないもの。
 ……というわけで、ちょっとだけ置いてあるものをチェックしてみる(勇気があるのか、単にバカなのか)。値段までは見なかったけど、ぱっと見、洋モノと日本のものが半々ぐらいという感じに見える。でも正直言って心惹かれるというほどのものではなかった(買って帰る? まさか。品揃えだってよくないしね)。

 結局特に欲しいものがなかったので、財布にやさしく僕は店を出る。荷物も増えなかったのでこの結果はたいへん結構である。欲しいものがある時っていうのはほんとにすべてのものが欲しくなるのだ。節約できるところで節約しておかないと、後で困ることになる。経験的に、自戒を込めて。

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