« くらげ | トップページ | 結婚式 »

2005/10/04

【香港的小旅行記 第32回】

 ■100万ドルの夜景 その2:

 夜景を見てしまったからにはそそくさと下に降りてもよかったのだが、なにしろさっきここに着いたばかりだし、それにここにいるとまたあの蒸し暑い下界に戻るのがひどく馬鹿らしく感じられるので、もうしばらくここで涼んでいることにする。


v-peak
(有名な香港の「100万ドルの夜景」・昼間版:夜のほうがずっときれいだけど、
一人で来ている身にとっては使い道のない風景で困る)


 夕涼みがてら特にあてもなくぶらぶらとその辺を歩いていると、向こう側に見える車道の奥から何人かの観光客が固まってこちらに向かってくるのが見えた。風が吹いていたせいか、いくつかの話し声に混じって日本語のような声も聞こえてくる。あの辺には特に何もないはずなのに、なんであんなところから人が出てくるのだろう?
 訝りつつも彼らが歩いてきた方向へと歩いていくと、その先にはピーク・タワーとはまたべつの展望台があった。とはいっても、ピーク・タワーのような近代的で大掛かりな建造物ではなくて、獅子や龍をあしらったいかにも中国風といった感じの小さな展望台だ。ピーク・タワーが近代的で大きな建物だったせいかもしれないが、向こうと較べると、こちらの方はまるでおまけで造ったもののようにも見える。

 展望台のまわりには30人ぐらいの観光客が集まっていた。ピーク・タワーの展望台と同様、欧米系の白人の姿も見えるし、日本人の団体の姿もある。ほかには中国本土やシンガポールあたりから来たとおぼしき人たちの姿もある。
 彼らの中に混じって僕も夜景を眺めてみると、こちらの夜景は、ピーク・タワーから見たそれよりもどこかしっくり馴染むようなところがあった。ピーク・タワーからの夜景には少し斜めから無理に見ているような微妙な違和感があったのだが、ここから見る夜景にはそれがなくて、すっと楽に見れる気がする。
 そういえばこの角度の夜景には見覚えがある。この龍や獅子をあしらったいかにも中国風の造りにも見覚えがある。そうだ、ずっと前に写真で見たのだ。もう10年以上前だと思うけど、父が買ってきた絵葉書か何かで見たのと同じ景色だ。それにこのあたりの土産物屋で売っている絵はがきの写真の景色も、こちらの角度に近い。
 そうか、これは昔からある展望台なんだ。こっちが昔からある古いやつで、ピーク・タワーの方は、これとは別に新しく造った展望台なのだ。だから昔からあるこっちの方が眺めがよくて馴染むのだ。おまけなんかじゃない。そしていちばん眺めのいいところには昔からの展望台があるから、新しく建てた方からの景色はどこかいまいちしっくりこないわけだ。なるほどね。
 
 おそらく、昔からあるこの「ライオンタワー」だけでは手狭なので、大勢の人が入れる施設を新たに造ったのだろう。その理由はわかるけど、でもこんなシーソーみたいな形をした薄らでかい建物を造る必要があったのかなって思ってしまう。香港返還で観光客が減少することを見越した上で、大掛かりな計画のもとにこれだけの施設を造ったのかもしれないが、いくらなんでもこんなでかい物を建てるのはやりすぎのような気がする。もう少し落ち着いた感じのものにはできなかったのか。少なくとも僕は昔からのライオンタワーの方が好きなんだけど。
 もっとも、ピーク・タワーの展望台のすぐ下にあるオープンテラスのカフェはなかなかよさそうだった。入り口が少しわかりにくくて見落としがちだが、ここはゆっくり景色を見ながらお茶が飲めそうなのでちょっとおすすめです。すぐ向かいにあるピーク・ギャレリアにも景色を見ながら食事のできるところはあるのだけれど、そっちは室内からなのであまりおもしろくない(たぶん)。ギャレリアからだとちょっと奥まってしまうし、やっぱりこういうのは窓越しではなく、じかに風を感じながらの方がずっといいと思う。

 ピーク・トラムの山麓駅からは、またバスに乗って中環のフェリー乗り場まで行く。
 中環のバス停で外に出てみると、昼間ここら辺を埋め尽くしていた「阿媽」たちはすっかりいなくなっていた。全然いない。夕方ここで山麓行きのバス待ちをしている時にはまだその姿が見えたのだけど、いまはまったく見えない。彼女たちはあれからいったいどこへ行ったのだろう? 
 帰りはスター・フェリーに乗って尖沙咀まで戻る。中環から地下鉄に乗って一気に油麻地まで行ってもよかったのだが、フェリーから見える夜景も見ておきたかったので、少し手間を増やすことにする。明日の昼すぎにはこちらを出なければならないから、今夜のうちに見ておかないと次がないのだ。
 フェリーから見る夜景はまずまずというところだ。悪くはない。でも船の上からだとオフィス街の明かりがあまり点いていないのが山の上以上に丸わかりになってしまうので、どこか迫力不足という感は否めなかった。やはり夜景は平日がいいみたいである。


File0182
(スターフェリーからの香港摩天楼の眺め。やはり平日の夜がベストです)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ホテルのある油麻地に着いたのは夜も10時を過ぎてから。尖沙咀のフェリー乗り場に着いたのは9時前ぐらいだったのだけど、そこからバスに乗ったのがまずかった。
 バスは冷房が効いているうえにフェリー乗り場から油麻地までダイレクトに行けるので、いちど使ってみようと思って乗ったのだが、ところがこのバスが思っていたのとはまったく関係のないところに行ってしまい(要するに乗るバスを間違えた)、途中で降りてタクシーを拾って帰るという手間を踏んだらこんな時間になってしまった。バスに乗っているあいだは不安と心配で緊張しっぱなしだったので、駅に着いた時にはもうくたくたである。
 バスに乗る前はいったんホテルに荷物を置いて、それから女人街のナイト・マーケットを軽く見て歩こうと思っていたのだが、予定外の時間を食ってしまって時間も遅くなっていたので、仕方なくこれはあきらめる。『深夜特急』にも出てきた夜の露店街というものもぜひ見てみたかったのだが、なにしろ時間もなければ体力もない。これから荷物をパックしなければならないし、それにまだ夕飯も食べていないのだ。やれやれやれ。

 尖沙咀からバスに乗ったのは結果的に見れば失敗だったわけだが(時間はかかる、カネもかかる、疲れてくたくたになる)、でもバスに乗ってよかったこともあった。そのひとつは、これで香港の主な交通機関のすべてに乗れたということだ。九広鉄道とミニバスを除く、地下鉄、フェリー、バス、タクシー、トラムの5つを制覇(トラムは明日乗る予定)。滞在わずか3日間という条件を考えれば、これは悪くないスコアだ。
 もちろん、まさかこんな形でタクシーに乗ることになろうとは思いもしなかったけれど、でも結果的にみれば、尖沙咀からバスに乗ったおかげで5種目制覇を達成したのだともいえる。僕は新しい街に行った時は、なるべくたくさんの乗り物に乗ってみたいたちなので、この5種目制覇はちょっと嬉しかった。現地の乗り物が使えるようになると、それだけその街が自分のものになったような気がする。


MTRmap


 夕食は二日連続でコンビニの食料で済ませることにして、軽く買い物をしてからホテルに戻る(残念ながらコンビニ弁当などいう気の利いたものはないので、またしてもカップめんとパンと「おにぎり」という組み合わせだ。むなしい)。
 もうちょっとどうにかならないものかと自分でも思ったのだけれど、そんなに腹も減っていないし、栄養補給ができればいいのでもうこれでいいにする。ぼさっとテレビをつけながら食事を済ませて荷物整理にとりかかる。
 テレビでは広東語のニュースやドラマをやっていたが、やはり昨日と同じく中国語の字幕がついている。なんで中国語の放送に中国語の字幕がつくのだろうとずっと不思議でならなかったのだけれど、しばらく考えてから、この字幕は大陸出身者向けのものなのだということに気がついた。中国における標準語である北京語と香港で話されている広東語とでは発音がまったく違うため、大陸から移住してきた人や出稼ぎに来ている人の中には広東語が理解できない人も多いのだ。そしてこうやってわざわざ字幕をつけているということは、それだけこの香港には大陸からやってきている人が多く住んでいるということなのだろう。
(※北京語と広東語では、漢字表記はほぼ一緒だが、その発音は、ほぼまったくと言っていいほど異なるようである。ともに日本の芸能界で活躍していた台湾出身のビビアン・スーと香港出身のチューヤンは、ふたりで話すときには日本語で話すというエピソードがあるくらいだから、北京語と広東語というのはほとんど共通点がないくらいに異なる言語なのかもしれない)

 荷物整理を終えてぼけっとテレビを眺めていたら、こちらのバラエティ番組に、そのチューヤンが出ていた。チューヤンはあのたどたどしい日本語ではなくて、流暢な広東語を喋っている。当たり前と言ってしまえば当たり前なのだけど、でもすらすらと話すチューヤンには、なんとなく妙な違和感が感じられてならなかった。まあともかくこっちでも活躍してるみたいである。
 12時半就寝。でも寝ついたのは結局2時半を過ぎてから。くたくたに疲れていたはずだったのだけど、まだどこか緊張が残っていたのかもしれない。

(2日目 了)

|

« くらげ | トップページ | 結婚式 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15236/6240722

この記事へのトラックバック一覧です: 【香港的小旅行記 第32回】:

« くらげ | トップページ | 結婚式 »