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2005/11/20

【香港的小旅行記 第34回】

 ■トラムの旅(銅鑼灣から中環へ):

 銅鑼灣から中環に向かう西行きのトラムの車内には、雑多な種類の人たちが乗っている。買い物帰りのおばさんもいれば、スーツ姿のビジネスマンもいれば(トラムの中にホワイトカラーのビジネスマンというのは、どうも馴染まないような感じがある。何となく浮いているのだ)。何をしているのかよくわからない暇そうな感じのおじさんもいるし、こちらで暮らしている日本人の親子連れもいた。周囲の景色がよく見える二階席の先頭に陣取っているのは大抵が観光客だ。トラムには冷房なんていう気の効いたものはないけれど、走っていれば窓から風が入ってくるので、特に暑さは感じない。


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(トラム2階席からの眺め。涼しいので結構おすすめです)


 灣仔のあたりでトラムは「ヘネシー・ロード」というこの辺りの大通りをいったん外れて、一本左のジョンストン・ロードに入る。山側に当たる通りの左手を見ると、このジョンストン・ロードから100メートルも行かない辺りですでに坂が始まっているのが見える。坂は急激にその斜度を増していき、山側にある建物のほとんどは僕の目線よりも高い斜面の上に立っている。海岸から入って600メートルも歩くと、もう山が始まるという具合なのだ。平地部分がすごく少ない。海と山に挟まれた位置に街が横に広がるという点では、この街の造りは神戸のそれに似ているかもしれない。神戸の特徴を5倍くらい濃縮したような感じですとでもいえば少しはわかってもらえるだろうか。
 これは昨日からずっと気になっていたことなんだけど、平地部分が少ないだけあって、住宅という住宅は見事なくらいにすべて高層である。見事なくらいに高層住宅が並んでいるので、ここにはフラット(一戸建て)に住んでいる人なんて果たしているんだろうか?という疑問が頭をもたげてくる。僕はこの香港に着てから今日まで一戸建ての住宅というのを見たことがない。あるいは僕が見たことがないだけで、一戸建てを持っている人だって多少はいるのかもしれないが、でもきっとそういうのはものすごいお金持ちの人たちに限られてしまうのだろう。そういうところはモナコ辺りのそれに近いのかもしれない(モナコなんて行ったことないけど)。
 そしてこれは街中だけじゃなくちょっと郊外に行っても同じでことで、建物という建物はそのほとんどが高層である。そしてその高さは、建物が新しくなればなるほど顕著になっているように僕には思える。それは建築技術の進歩で高層のアパートメントが建てやすくなったせいかもしれないし、あるいは住宅事情のいっそうの逼迫化で、少ない土地を極力有効に活用するという必要に迫られているからかもしれない。


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(香港によく見られる高層住宅。9割以上が高層なんじゃないかな)


 トラムはまたヘネシー・ロードに戻り、金鐘そばのパシフィック・プレイスの目の前を通り過ぎていく。きのうは時間がなくてここには来られなかったので、外観だけでも見られたのは幸運だった。
 パシフィック・プレイスのまわりには、コンラッドやアイランド・シャングリラ、そしてJ.W.マリオットという高級ホテル群が脇を固めるようにして立っている。アイランド・シャングリラは世界のホテルランキングで毎年上位にランクされる最高級ホテルであるとのことだし、同じく最高級ランクに位置するコンラッドには、ルームキーでエレベーターが動くという何じゃそりゃなサービスもついている。
 そういうホテルに囲まれているということは、パシフィック・プレイスというところも、そういう感じの施設なのだろう。このへんのことは容易に想像がつく。つまり、グレードが高いのだ。おそらく僕が行っても、見るべきところはそれほどないだろう。やはり僕なんかにとっては、タイムズ・スクウェアあたりが相応であるみたいだ。昨日ここを飛ばしておいたのは正解だった。

 パシフィック・プレイスを過ぎると、トラムはビジネス街である中環へと入っていく。目の前には「剣」と称された中国銀行ビルと、「力寳大厦(リッポ・センター)」という名前の、これまた斬新な形をしたビルが立っている。きのうとは別の角度から見る中国銀行のビルは、高層ビルとしては実に奇妙な形をしているし(どういう理由でこんな形が必要になったのか、僕にはまったく想像がつかない)、一方のリッポ・センターも、全身ガラス張りの上に、いままでに見たこともないような複雑な外観をしている。
 香港にはガラス張りのビルがたくさんあるけれど、このガラス張りというのは風水的には「邪気祓い」の意味があるそうである。特に「剣」の切っ先を向けられたビルとしては、邪気対策は切実だろうから、外壁一面にガラスを張ったり、複雑な形状の外観を取り入れて邪気を受け流そうとするのもやむをえない選択であるのかもしれない。しかし、そこまでやるかね普通。
 そういえば前回の旅行でカナダのヴァンクーヴァーとカルガリーの街を歩いた時も、やはりガラス張りのビルディングをたくさん見かけた。それらのガラス張りのビルを見て、「なんか中国的だなー」と思ったのをいまでも覚えている。カルガリーは知らないが、ヴァンクーヴァーも中国系の移民が多い街だから(たしか香港返還の煽りでカナダに移住した人が多かったと記憶している)、カナダにおいても風水の影響が街並みを変えているのかもしれない。あるいは風水には全然関係なくガラス張りだったりするのかもしれないけれど。


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(香港にはとにかく鏡張りが多いです。左は“剣”と称された中国銀行ビル)


 トイザらスでの買い物を終えてから、僕は東涌線に乗って空港へと向かった。時間的にはほぼ予定どおり。特に問題らしい問題はない。
 空港へ向かう電車の車内は気持ちいいくらいにがらんと空いていて、僕はそのあいだずっと、だらんと足を伸ばして窓の外の景色を眺めていた。
 天気はさっきまでより幾分曇り加減になってきたが、それでもまだ青い空がよく見える。青い空と、青い海。そのあいだには雲の白と木々の緑と、真新しいアスファルトのいくぶんつやがかったグレーが挟まれている。あとは道路の白線と案内標識のグリーンがちらほら。そういう景色を前にしていると、ほんの30分前までいた香港がまるっきりのうその世界みたいに思えて仕方がなかった。本当に、ほとんどまったくの別世界みたいなのだ。

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