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2005/12/13

84.きっかけは、ドライヤー

昨日の投稿の続き。

ひきこもりの家族会や講演会なんかがあると必ず、
「で、ひきこもりから出られたきっかけは何ですか?」と聞かれる。
親御さん側からしたらそこがいちばん知りたいポイントなわけだから、
これはもう100%聞かれる。だからこちらも前もって答えは用意してある。
これだけ何べんも聞かれればそりゃ用意できますって。

で、いつも言う僕の答え。
「つまり、諦めたんですよ」

それまで僕は、
<この状態(=ひきこもり)は自分の問題なんだから自分ひとりで解決する>
と思い続けていた。頑なにそう信じてやまなかった。譲れなかった。
親に相談するのが恥ずかしいという気持ちももちろんそこには含まれていた。
相手が自分の親であるからこそ
自分のいちばんの弱みを見せられなかったりするもんである。
実際に僕はそうだった。

だがその膠着した生活が長期に及ぶにつれ、
自分でもあることに気がつかないわけにはいかなくなってしまった。
<もう自分だけの力では無理だ。誰かほかの人の力を借りる必要がある>と。
そう自分で諦めたとき、はじめて「人に相談したい」という気持ちが生まれ、
はじめて人に「助けて」と言える環境が整った。
そんな頃、偶然に家のドライヤーが壊れ、
僕は母にお金を渡されて近くの大型電器店まで行き、
その帰りに文藝春秋を見つけてほんの出来心で買って、
そしてその中に「ひきこもり」の記事を見つけた。
それは昨日ここで書いたとおり。

よって、家族会や講演会などで「きっかけ」を聞かれた場合、
僕はこう答えることもできる。
「きっかけは、ドライヤーなんです」

なーんじゃそりゃ。
たぶん会場の親御さんたちは呆気にとられるだろう。
そこに含まれた意味なんて、もちろんわかるはずもない。
でも実際そうなのだ。
あの時先々代の黒いドライヤーがショートして壊れなければ、
あと1ヶ月持って7月になっていたなら、
僕は「ひきこもり」にめぐり合うこともなく更なる膠着生活を続けて
30歳を迎えていたかもしれない。まだ今もひきこもっていたかもしれない。
そういうしょうもない偶然が重なっていまの僕はここにいるわけだ。
人生って不思議。

こないだはそういう話はできなかったけれど、
こんどいっぺんその内容で話してみようかな。
みんなどんな顔するのかな。
想像しただけでなんだか微妙に笑えてしまう。
でも、それもまた真実なんだよ。

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